【ポジティブ心理学に学ぶ】しなやかに対処する心の強さを身につける方法とは

ポジティブや心の強さは、生まれ持った天性や才能だけではなく、技術でありテクニックでもあります。心が折れそうなとき、ポジティブかつしなやかに対応できる方法があるなら身につけたいと思いませんか?

例えば仕事の失敗から立ち直れなかったり、心無い一言がいつまでも頭を離れなかったり。誰にだって負の感情に苛まれるタイミングがあるものです。この記事は「ポジティブになる方法が知りたい」「心を強くしたい」そんな方へ向けて書きました。幸せを分解し、ポジティブを科学した【ポジティブ心理学】に学ぶ、心のテクニックをご紹介します!


心の強さって何…?【ポジティブ心理学に学ぶ】

まずはポジティブ心理学について簡単に見ていきましょう。個人的には「ポジティブ心理学??なんだか怪しい‥」というのが第一印象でした(笑)しかし調べれば調べるほど、それがただの精神論ではないことが分かってきました。心が強いとはそもそも何か、ポジティブ心理学を知ることできっと見えてくるはずです。

ポジティブ心理学とは

ポジティブ心理学は、1998年に米国心理学会会長であったペンシルベニア大学心理学部教授のマーティン・E・P・セリグマン博士によって発議、創設されました。当時の心理学は「うつ」などを治療・回復するための研究が主。精神疾患などの困難にある人の回復のために何かをしようということはあっても、普通の人の人生をより良くする方法については考えることがなかったそうです。セリグマン博士はそれを当時の心理学の良くなかった点とし、ポジティブ心理学の研究をスタートしました。

ポジティブ心理学3つのゴール

・人の弱い部分と同じように、強みにも着目すること
・傷を回復させることと同じくらい、強みを伸ばすことにも関心を持つこと
・普通の人々の人生をより充実させること

普通の人の人生をより幸せにすべく始まったポジティブ心理学。瞬間的・一時的な幸せではなく、人生の生きがいについてや、生きるに値する人生を構成するものとは何かなど、永続的な幸せを得るための研究が重ねられてきました。上記3つをテーマとして始まったポジティブ心理学ですが、セリグマン博士は近年『ウェルビーイング理論』を提唱しています。ウェルビーイング(より良い状態)を構成する柱となる要素は『PERMA』と略称される以下5つです。

幸せを構成するウェルビーイング理論5つの柱

P=Positive Emotion(ポジティブ感情)
E=Engagement(時間を忘れて没頭・没入・熱中できる活動への従事)
R=Relationship(関係性、人間関係)
M=Meaning and Purpose(人生の意味や仕事の意義、および目的の追求)
A=Achievement(達成、成し遂げること。※必ずしも社会的成功は伴わなくてもよい)

「なるほど、この5つが大切なんだな。」と理解したとして、誰もが容易に高められているのかと言えば、それはNOですよね。時折遭遇する困難や不意に降りかかる良くないこと、自分自身が抱える問題などが障壁になるからです。マイナスなことが何もなければ、誰だって PERMA 高め放題!人生最高!!と、そうはいかない人生だからこそ押さえておきたいのが、5つの要素それぞれの値を引き上げる補助力とも促進力ともされている『心の強さ(レジリエンス)』です。

レジリエンスとは、困難や逆境に対処する力であり、人生の肯定的な側面を増強する力でもあります。即ち、状況が良くても悪くても、しなやかな対応を可能とする力です。

一般社団法人 日本ポジティブ心理学協会

レジリエンスは簡単に言うと、回復力・打たれ強さであり耐久力です。ウェルビーイング(より良い状態)の5つの柱が困難や逆境で揺らぎそうになったとき、倒れないように、軸を戻すように、バランスを取ってくれるのがレジリエンスなのです。逆境や困難なんて言うと大袈裟ですが、日常生活に置き換えると以下のようなことが挙げられます。

  • ⚪︎⚪︎さんに嫌なことを言われた
  • 仕事でミスをした
  • 先輩や上司に怒られた
  • 人間関係がうまくいかない
  • 人と比べて落ち込む
  • 否定されて自信をなくした
  • 嫌なことから逃げたくなる
  • 辛いことがあって心が折れそうになる

これらはほんの一部ですが、日々のお困りごとや不意に起きる嫌なことも立派な逆境・困難です。では心の強さ(レジリエンス)の値が高い人は、どんな特徴を持ってして日々上手く対処しているのでしょうか。上手くいかないことに対する具体的な反応もあわせて見ていきましょう。

心が強い人ってこんな人。

心が強い人』と聞いてどんな人を連想しますか?

個人的には、たとえば雷に打たれても風雨にさらされても耐え忍ぶことができる、大木みたいな人物を想像していました。ただ、一見頼もしい大木も、全てに真っ向から立ち向かい耐えるだけではいつか倒れてしまいます。変化の多いこの時代、どちらかと言うと竹のようなしなやかな強さこそ欠かせません。目には見えない『心の強さ』を、あえて言葉にすると大きく2つの特徴があります。

  1. しなやかに対応できること
  2. 振り戻る力があること

竹のようにしなやかに!なんて言ってますが、正直少し抽象的ですよね。どんな要素がしなりを生み出し、そして振り戻らせるのか。しなやかに対応する力や、振り戻る力の正体についても分解して考えてみました。

  • しなやかさの正体は‥柔軟性、解釈の工夫、多角的な視点、縛られない固定観念
  • 振り戻る力の正体は‥楽観性、前向き思考、客観的な視点、人に頼る力、素直さ、学びに変える力

例えば仕事でミスをして怒られたとして。「最悪だ…」と気持ちが落ちても、「上手くいかない方法がひとつ分かった」と解釈を工夫し、「よし、次は同じことでミスしないように頑張ろう」と前向きに考え気持ちを戻すことができます。

例えば嫌なことを言われたとして。「そんな言い方しなくても…」と凹んでも、「こういうタイプの人もいるんだな」と柔軟に捉え、「自分はああいう言い方はしないようにしよう」と学びに変えて切り替えることができます。

例を2つほど挙げましたが、ポジティブな人が反射的に行なっているのが、気持ちを戻したり切り替えるための脳内会議です。逆境や困難にぶち当たったとき、落ち込んでもいいし、凹んでもいい、嫌になったっていいんです。ただ、そうしてどんなにしなっても、振り戻ろうとする人が心が強くポジティブな人であり、自分の毎日をより良いものに変えていける人なのです。次の項目では、この脳内会議の手順を具体的にご紹介します!

ポジティブな人が無意識にやっている方法

「しなやかに対応する」「ポジティブに対応する」「心を強くする」とは言え、実生活の中で具体的にどうすれば良いのかが問題です。ポジティブな人が脳内で無意識にやっている、実生活にもすぐに取り入れられる方法をご紹介します。

ABCDEモデルで解釈をかえる

ABCDEモデルは、ポジティブ心理学を創設したセリグマン博士がレジリエンスを高めるひとつの方法として開発したものです。アメリカの臨床心理学者であるアルバート・エリス氏が創始した論理療法をもとに作られており、根底には以下のような考え方があります。

人の悩みやマイナスな感情・行動は、
出来事そのものが原因で引き起こされるものではなく、
出来事の受け取り方に左右されるものである。

困難や逆境が深刻で辛いものになるのは、思い込みや主観的すぎる考えが原因だったりします。お困りごとに直面したとき「とにかくポジティブに考えよう!」なんて上辺だけの言葉でなく、ポジティブ方面へ具体的に進むためのガイドマップがABCDEモデルです。まずはAからEの意味を見ていきましょう。

  • Affaire:困った状況、出来事
  • Belief:考え方、捉え方(思い込み)
  • Consequence:結果、反応(出来事に対する自分の感情や行動)
  • Disputation:考え方、思い込みに対する反論
  • Effect/Energization:効果/元気づけ

実践方法は至ってシンプルで、AからEの順に書き出すだけです。ABCで出来事や気持ちを整理し、DEで感情や行動をポジティブなものへと変えていきます。たとえば職場で先輩に冷たい態度を取られたとして、ABCDEに当てはめるとこのような感じです。

  • A:先輩に冷たい態度を取られた。
  • B:きっと自分に至らない部分があるからだ。
  • C:自己嫌悪・自信喪失、仕事に行きたくない。
  • D:いやいや、あの態度の原因が自分のせいか、あの態度に何か意味があるのか本人に確認した訳ではないし、そもそも冷たいと感じたのは気のせいかもしれない。人間誰しも気分が乗らない日があるものだ。
  • E:とりあえず深読みするのはやめて、少し様子をみてみよう。

Bで出来事に対する自身の思い込みを見つけ、Dで「その根拠は?」「証拠は?」とポジティブに反論することがポイントです。補足として、思い込み(Belief)の6つの種類と、反論(Disputation)を考えるときに使える自問例をご紹介します。

思い込みの主な種類

  1. 相応しさ:「それは私には相応しくない」「向いていない」
  2. べき/ねばならない:「⚪︎⚪︎であるべき」「やるべきではない」「しなければならない」
  3. 憶測:「どうせ悪いことが起きる」「簡単にうまくいかない」「うまくいっても次はダメだろう」
  4. 無能力:「私は⚪︎⚪︎が苦手だからできない」「頭が悪いから無理だ」「自分には能力がない」
  5. 無価値感:「私は幸せになる価値がない」「人に愛される価値がない」「必要とされていない」
  6. 自責・他責:「うまくいかないのは自分のせいだ」「うまくいかないのは他人のせいだ」

反論に使える質問例

  • その思い込みの根拠や証拠は?
  • その思い込みは現実を機能させる?または有効か?
  • その思い込みは自分を成長させるか?
  • もしその思い込みが本当なら、それは何を意味しているのか?
  • 別の見方や考え方はできないか?

さて、方法を確認したところで次は実例をいくつか見ていきましょう。「自分だったらこう考えるな〜」「自分だったらこう反論する。」など、自分に当てはめてABCDEをイメージしてみてくださいね!

私のABCDE実例5選

ここでは、直近や過去の出来事から私のABCDE実例をご紹介します。ABCDEモデルは、身を任せればどこまでも流されてしまいそうな感情の波から抜け出すひとつの手段です。AからEまで順に実行し、負の感情を上手く手放しポジティブに切り替える練習をしましょう!

①挨拶を無視された

  • A:挨拶を無視された。
  • B:え、絶対嫌われてる。
  • C:話かけるのが怖い、やりづらい、仕事に行きたくない。
  • D:あれは本当に無視か?もしかして聞こえてなかったかも。自分の声が小さかったのかも。
  • E:次は会釈も加えて声を大きくして挨拶してみよう。それでも無視されたら、またその時考えよう。

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ポイント!B:え、絶対嫌われてる。
→「その思い込みの根拠や証拠は?」と自問し反論

②仕事でミスをした

  • A:仕事でミスをした。
  • B:最悪だ。自分はなんて無能なんだろう。
  • C:この先仕事を続けられるか不安。ミスが怖い。
  • D:無能だなんて言ってても何も変わらないな。それに100%ミスのない人間はいないし、先輩や上司もみんな同じスタートラインだったはず。諦めるのはまだ早いか。
  • E:同じことでミスしないように、次から気をつけよう。
ポイント!B:最悪だ。自分はなんて無能なんだろう。
→「その思い込みは自分を成長させるか?」と自問し反論

③お酒の席でやらかした

  • A:お酒の席でやらかした。
  • B:絶対引かれた。恥ずかしい。嫌われたかも。
  • C:合わせる顔がない。何て思われてるんだろう。
  • D:いや、他の人も結構お酒入ってたし覚えてないかも。嫌われたなんて証拠はどこにもない。でも多少なりとも迷惑はかけただろうし、なんか言われる前に自分からさらっと切り出すか、、、。
  • E:よし、とりあえずこの嫌な記憶をなくすために飲みに行こう。(笑)
ポイント!B:絶対引かれた。恥ずかしい。嫌われたかも。
→「その思い込みの根拠や証拠は?」と自問し反論

④人前で変なことを言ってしまった

  • A:人前で変なことを言ってしまった。
  • B:取り返しがつかない。穴があったら入りたい。絶対変なやつだと思われた。
  • C:顔を合わせたくない。できれば二度と。
  • D:取り返しがつかない、は大袈裟だったかも。だって逆に今「誰かが変なこと言ってた時のこと思い出せる?」って聞かれたら思い出せない。人は他人にそこまで興味関心がないし、自分が気にしすぎているだけかも。
  • E:しばらく思い出すだろうけど、どうせ相手は覚えてないし、気にしないように努めよう。しれっと普通に接してみよう。
ポイント!B:取り返しがつかない。穴があったら入りたい。絶対変なやつだと思われた。
→「別の見方や考え方はできないか?」と自問し反論

⑤好きな人に振られた

  • A:好きな人に振られた。
  • B:自分に魅力がないからだ。
  • C:ぜんぶおしまい。何も上手くいかない。何もかも嫌になる。
  • D:魅力がないなんて言ってても仕方ないな。人類はまだまだ他にいる訳だし、自暴自棄になってる時間がもったいないか。もう恋なんてしないなんて言わないよ絶対〜♪
  • E:仕事に打ち込んで時間が経つのを待とう。自分磨きしよう。
ポイント!B:自分に魅力がないからだ。
→「その思い込みは有効か?」「別の見方や考え方はできないか?」と自問し反論

キーワードは「それってあなたの感想ですよね?」です。

ここまで手順に沿った方法をご紹介してきましたが、いざお困りごとに遭遇したとき「感情が先行して何も考えられない…!」「ABCDEをその場で実行する余裕なんてない…!」という時も正直ありますよね。そんなときはひろゆきさんの「それってあなたの感想ですよね?」を思い浮かべてください。別にひろゆきじゃなくてもいいんですが、個人的にはオススメです(笑)

恥ずかしい・悔しい・情けない・悲しい・辛いなどの感情が頭の中を埋め尽くしているとき、要は少し肩の力を抜いて、冷静かつ客観的に考えるきっかけを持つことが大切です。「もうダメだ・・!」と思ったときに「それってあなたの感想ですよね?」が聞こえると、それがただの思い込みであることに気づくこともあるのです。客観視するトリガーのひとつとして、頭の隅に置いておいてはどうでしょうか。

まとめ

今回はポジティブ心理学にヒントを得ながら、具体的かつすぐにできそうな方法をご紹介しました。

ポジティブになる方法はきっと山ほどありますが、最終的には自分の中の軸のようなものが、どんなに大きくしなっても必ず振り戻る強さに変わっていきます。なんでもいい、どうでもいい、人に合わせる、ではなく、自分の芯となるものをひとつでも持っておくことが大切です。それは難しいことではなく、「あの人みたいになりたいな」「⚪︎⚪︎な自分で在りたい」と心に持っておくだけでOK。

なんて書きながら「ここまで読んでくれる人なんているのかな〜」と弱気な自分が出てきたので、今から軽くABCDE回してきたいと思います(笑)

それでは、最後まで読んでくれたあなたの今日が最高の1日になりますように!

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